かつて、NHKの放送には「こだわり」と「ポリシー(信条)」があったように思う。
ところが、最近の放送を見ていると残念ながら、そうした自負はほとんど感じられない。
その昔、長髪を理由に「グループサウンズ」が紅白歌合戦に出演できなかったことがあった。当時としては画期的な決断だったのであろうが、その毅然とした姿勢はNHKの「こだわり」と同時に好感を与えるものだった。そうした決断は当時の社会的状況からすると勇気ある行動であり、まさしく逆風だった筈である。しかしながら、そうした行動こそNHKが自身の立ち位置をわきまえた、放送に対し目指すべき姿勢ではないかと思う。
それでは、NHKのこうした姿勢は時代とともにどうして軟化してしまったのだろうか。
先ず思いつくのは、NHK 内部の不祥事問題と視聴率至上主義である。
NHKアナウサーによる暴行事件やプロデューサーの番組制作費不正支出など例を挙げれば切りがないが、そうした不祥事が立て続けに起こった。一方、番組の「やらせ」問題や「プロジェクトX」という番組での事実と異なる放送などが同時多発的に起きた。
一連のこうした事件は当然のことながらNHKの立場を悪くし、やがてその汚点をカバーするために視聴率至上主義という間違った方向を選択したのだろう。こうしたシナリオが容易に考えられる。
ただ、不祥事問題に関して言えは、それが一職員による単独の事件であるとしたら、それは致し方ないことだと思うのだが。数ある職員の中にはそうした良からぬ輩は少なからずいるはずである。それに対し組織として一定の責任をとることは確かにケジメだろうが、それによって組織の方針まで変える必要はないと考えるのは甘過ぎるだろうか。
個人的にはNHKに同情的である。当時、謝罪の特別番組なども放送し改革の姿勢を示したが、それよりも番組の内容で償ってほしかったと思う。
それ以来、NHKは視聴者に対し必要以上に媚を売っているように思えてならない。
その最たる具体例が民放化現象である。お笑いタレントの起用、食べ物を扱った番組構成、民放顔負けの「番宣」攻勢など。そう考えると、そもそもNHKは問題をはき違えているのではないかと思えてくる。独自路線を忘れ、民放の比較的視聴率の取れる番組内容を模倣するような安易な番組制作の道を選んだNHKに、輝かしい未来は見えてこない。
最近話題になっている、NHKの外来語乱用問題はまさに今のNHKを象徴しているような出来事だと思う。この問題に対し、NHKの言い分として「新しい感覚を盛り込む」といった理由が伝えられているが、このことこそ私が指摘する「NHKのはき違え」に他ならない。
NHKの番組に対し誰よりも期待し、楽しみにしているのは、他でもない高齢者の方々である。
そうした高齢者に外来語を多用したニュースやドキュメンタリー番組を放送することに番組スタッフは何の違和感も感じないのであろうか。ひとつの番組が完成するには当然いくつかの段階を経て、打ち合わせ会議なども開かれているはずである。その中で問題視されなかったことが、私たち素人の目から見ても不思議でならない。何より求められるのは、時代に遅れないための「新しい感覚」ではなく「分かり易さ」「正確さ」ではないのか。
わたし自身もこの文章の冒頭で敢えて「ポリシー(信条)」という外来語を使ったが、そこには「インターネットの世界だから」というある程度対象を見極めての判断があってのことである。
NHKの場合、視聴者の年代別割合を市場調査等で当然把握しているであろう。
それでも敢えて確信犯的にやっているとしたら、罪深いとしか言いようがない。
裁判の結果は現時点では出ていないが、その行方に注目したい。
視聴率の呪縛から一刻も早く抜け出し、独自路線の生き生きとした魅力ある番組を是非とも制作して頂きたい。今のところ期待できるのは地上波では「NHK」と「テレビ東京」だけだから。
今も細々と放送される大晦日の「行く年くる年」は幼少のころから見ていた懐かしい番組である。
各地のお寺を巡る映像は、気忙しい年の瀬とは裏腹に、心安らぐひと時である。
かつては、民放も含め共同番組として同時映像で放送されていたが、いつの間にか民放からその姿が消えた。NHKにはどんなことがあっても放送を続けていただきたいと思う。
この種の番組こそNHKらしさであり、NHKの存在感を示す番組内容ではないだろうか。
そして、視聴率がどうであれ、続けることがNHKの「こだわり」であり「ポリシー(信条)」だと思う。
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