あの頃、僕のCinema Paradiso:シンドラーのリスト
シンドラーのリスト
「優れた映画音楽に駄作映画はない」
この映画は1993年に製作された作品です。
監督はなんと映画「ジェラシックパーク」などで有名なあのスティーヴン・スピルバーグ。
ホロコーストを背景にした、実話に基づく作品です。
見どころはドイツ人実業家オスカー・シンドラーが当時のナチスドイツを相手に、
如何にして1000人以上のユダヤ人を救ったかということ。
危険を冒してまで何故にそんな大それたことを行なったのか、その目的は何だったのか。
当時のナチスドイツといえば、わたしがここで申し上げるまでもないことなので割愛しますが、全体主義体制下で権力に抵抗し、どのようにしてユダヤ人救済に結びつけたのかが、まずわたしとしては信じられませんでした。
とりわけ関心があったのが、実業家オスカー・シンドラーという人間が如何なる人物だったのかということです。
映画を観るまでのわたしの勝手な想像は膨らむばかりでしたが、
単なる美談、英雄談ではないかというわたしの先入観は映画の始まりと共に見事に打ち砕かれます。
公開から30年近く経っているので、ネタバレのご指摘は時効ということで、彼の人となりについて多少お話ししておきましょう。
ドイツ人の彼は実業家としての才能に恵まれていて、お金儲けには人一倍貪欲だったようです。いわゆる清廉潔白とは程遠い人物で、人の扱いについても長けていたのです。
当初、彼は率先してユダヤ人を自分の工場に雇い入れます。それは彼らを救うという目的ではなく、彼らユダヤ人なら低賃金で雇えるという損得感情が働いていたからで、自分にとって有利だったからです。
そんな彼を博愛(人を救けるという意味での)の行動に導いたものが何だったのか。
また、ナチス党の党員でありながら、党を裏切り何故あのような行動がとれたのか?
それは、以外にも彼がナチス党員だったからこそ出来たのですが、
その辺りのことはブルーレイやDVDで実際に確認してみてください。
作品のテーマがあまりに重たいため、敬遠されがちなカテゴリーですが、観る価値は充分あると自信をもって言える映画です。
そんなわたしですが、実のところこの作品を観たのは僅か数年前のことでした。
それは公開から20年以上が経っていたことになります。
理由は自分でもハッキリしません。
日々の雑用にかまけて観るタイミングを逸してしまったというのが本音でしょうか(気軽に楽しめる映画や連続ドラマを優先したためか)。
或いは、3時間超という作品の長さもあったのかもしれませんが、
DVDを買ってあるからいつでも観ることが出来ると言う、変な安心感があったのかもしれません。
結果的には、もっと早く観ておけばよかったと後悔しています。
ところで、シンドラー役のリーアム・ニーソンは映画の中で、戦況の変化とともに刻々と変わっていく自身の環境変化に対し、順応していく主人公を見事に演じています。
この作品の後、彼は映画俳優として大きくブレークしていきます。
シンドラー役のリーアム・ニーソン |
そんなリーアム・ニーソンとは対照的にシブい演技で存在感を示したのが、シンドラーの工場で経営を任された会計士イザックを演じたベン・キングスレーです。
因みに、彼はこの作品の前年1982年に「ガンジー」でアカデミー主演男優賞を受賞しています。
イザックを演じたベン・キングスレー |
このように、話題性の多かった「シンドラーのリスト」ですが、わたしがこの映画で一番凄いと感じたのは、それまで「ジェラシックパーク」や「インディージョーンズ」など娯楽性の強い作品でヒット作を連発していたスピルバーグ監督が、娯楽路線からシリアス路線に切り替えて、アカデミー狙いで、狙い通りアカデミー作品賞を受賞したことです。
賞には事欠かないスピルバーグでもアカデミー作品賞だけはどうしても受賞したかった賞だったんですね。
そして、最後に忘れてはならないのが、作品全体に流れるジョン・ウィリアムスの音楽です。なかでもメインテーマは、この映画を象徴するかのような何ともやるせない楽曲になっています。
その哀愁を帯びた旋律は、深い悲しみとともに涙を誘います。
実は、わたしがながいこと封印(?)していたこの映画を観る気にさせたのは、このメインテーマの存在だったのです。
「優れた映画音楽に駄作映画はない」「優れた映画はその映画音楽も素晴らしい」がわたしの心情でしたから。
ジョン・ウィリアムスは言うまでもなく、映画音楽の第一人者。
この作品でもアカデミー作曲賞を受賞しました。
さらに、このメインテーマのヴァイオリン・ソロは、クラシック界の大御所「イツァック・パールマン」です。
このように、映画「シンドラーのリスト」は一流の監督、一流のキャスト、一流のスタッフ陣と最強メンバーによる作品だった訳で、アカデミー賞の多くの部門で受賞できたのは当然と言えば当然のことだった訳です。
それにしても、なぜ公開当時に観ておかなかったのかということが悔やまれます。
観ていたら人生変わっていたかも?
チョッとオーバーか、でも人生観は変わっていたでしょう。
大切にしたい映画です。
なお、「シンドラーのリスト」メインテーマについては、まだまだ話したいことがあります。これについては別シリーズ「音楽聴きくらべ」で取り上げたいと思っています。
2020.03.30 JDA
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