忘れかけていたわたしたちの季節感
みなさんはヴィヴァルディの4つのヴァイオリン協奏曲「四季」という曲をご存知ですか?
そうですよネ!
クラシックファンでなくても、一度は聞いたことのある親しみあるメロディー。
ご存知の方も多いことと思います。
世界的に有名な曲ですが、日本は特にそのファンが多いようです。
そんな「四季」ですが、その存在を知られたのは意外に最近で、第二次大戦後と言われています。
わたしも、1960年代ごろからイ・ムジチ合奏団(フェリックス・アーヨ)の演奏によるLPレコードがベストセラーを長年続けていたことを当時リアルタイムで知っていました。
当時、新発見だったこの曲が楽曲的にも優れていたこともあり、あれ程の反響があったのだと思います。
楽曲は当然、作曲者ヴィヴァルディの故郷ヴェネチアの四季をイメージしている訳ですが、四季折々の風光が魅力の日本で、爆発的な人気が出たのは当然のことと言えましょう。
そんな四季ですが、最近わたしたちが抱く季節感は、一昔前に比べて薄れてきていると感じないでしょうか。
差し当たり、食物の観点から考えてみました。
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極論すれば、いまの時代、お金さえ惜しまなければ、時期、季節に関係なくどんな食物でも食べることができるのかも知れません。それほどに現代は、技術が進み、私たちの生活は便利になり、そして贅沢になっています。
確かに昔は、例えば夏にりんご、冬にトマトは食べることができなかったはずです。
しかし、いまは野菜や果物のほとんどを一年中食べることができる時代です。
ただ、こうした「いつでも、誰でも、何でも、食べることができる」と言う状況には、二つの世の中の変化があったからだと思います。
まず一つ目は科学の進歩、技術の進歩です。野菜や果物の品種改良、魚類などの養殖技術、環境の改善、或いは外国からの輸入など、人間の努力と工夫で上記のような便利な状況を実現してきたのです。これは正しく人類の英知の結晶による恩恵に違いありません。
二つ目はわたしたちの生活習慣、風習などの変化、或いは大袈裟に言えば文化の変遷(乱れ?)によるものです。
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例えば、お餅などはわたしの知る限り、お正月に食べるものでした。でも、いまはスーパーへ行けば一年中お餅のパックが売られていて、わたしたちは手軽に食べることができます。
昭和30年代中頃にはケーキはクリスマスに食べるものといった風潮があったよう記憶します。
とにかくケーキは高価で、近所の駄菓子屋さんは勿論のこと、お菓子屋さん、パン屋さんでさえ普段はその姿を見かけることはありませんでした。
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このお餅やケーキの場合は、実は技術の進歩によって食す時期が変化した事象ではないと思います。
つまり、昔は生活慣習上からお正月やクリスマスに食べていて、その季節以外は食べなかったということでしょう。
ケーキの場合は、お餅とはチョッと状況が違って、当時は日本全体が貧しかったため、庶民は買えなかったのです。世の中が豊かになるにつれ普段でも食べるようになっていったのです。
言わば、お餅やケーキは私たちの生活様式の変化によって成された事例で、技術革新の恩恵によるものではないと考えます。
わたしは古い考えの人間なので、いつでも気軽に食べることができると言うよりは、季節季節の旬と言われる食材を美味しくいただきたい派です。
秋刀魚(サンマ)を敢えて秋以外の時期に食べる必要性はなく、個人的にはそうした嗜好は邪道と感じるのですが・・・
そもそも、わたしは魚類が苦手なので、無責任なことは言えませんが、秋以外のサンマは脂のノリが悪いというから、旬以外はしばらくは我慢して美味しい秋に食すのが一番だと思います。
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それこそ、春夏秋冬のそれぞれの季節感を感じ、自身が自然界の一員であり、生きているという実感が増すのではないでしょうか。
温暖化の影響か、人間の力の及ばぬところで、我が地球の自然、季節感は徐々に(或いは、急激にという見方も)乱され、わたしたの生活もその影響で変化(悪化)を強いられています。
過去を振り返ると、わたしたち人間自らがそうした季節感を乱してきたという一面もあったように思います。
そんな状況の中、わたしたちは原点に立ち返り、せめて人間ができる季節感(風習、式たり、慣習など)だけは大切に、これからも頑なに守り抜いていきたいものです。
梅、柿、栗など、まだその季節でないと食せない食べ物は僅かですがあります。
「人類の英知の結晶による恩恵」を追いかけるだけでなく、時には冷静に過去を振り返ることも必要かと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
from JDA
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