NHKの受信料値下げから思うこと
NHKの受信料値下げから思うこと
Florian LenzによるPixabayからの画像 |
値上げラッシュのこのご時世にあってNHKの受信料値下げはありがたい朗報だ。
はじめは「値上げ」の間違いではないかと耳目を疑ったが、本当のことのようである。
と言うことは、裏を返せば今までが料金が高かったのかと勘ぐってしまうのはわたしだけか?
まあこの際、深くは考えず今回の値下げを純粋に歓迎しよう。
ただひとつ気になるのが、今回の値下げでNHKが一年間に使える金額が、これまでよりも7千億円から1千億円ほど減少することである。
予算が減ればどこかに皺寄せがくるのは常識である。
今わかっている皺寄せといえば、BS放送のBS1とBSプレミアムのチャンネルが一本化されること。
日頃、BSプレミアムをお気に入りにしているわたしとしては甚だショックである。
いま放送中の番組構成・内容に疑問
わたしは古い人間なので、どうしても変化よりも現状維持を支持してしまうのだが、
自分の好みにあった番組が増えてくれれば言うことはない。
しかしながら、最近のNHKの番組を見ると、現状はそれとは逆の方向に向かっているようで残念でならない。
例えば、民放が放送しているようなお笑い芸人が出演するバラエティー番組や、
タレントがレポーターになった旅番組など、ほとんど民放の番組と区別がつかない。
その昔、「教育テレビ」と呼ばれていた現在の「NHK Eテレ」は娯楽チャンネル化したのかと思える情けない。
「いつの間にかNHKはその原点を忘れてしまったのか?」と疑いたくなるほどである。
「娯楽か教養か」と問われれば、やはりNHKは「教養番組」を目指してほしいと答えたいが、
この辺りは組織の政策に関わることなので、部外者はこれ以上のコメントを控えることにしよう。
NHKは視聴率がすべてではないはず
何度も言うようだが、NHKの強みは、民放のように視聴率に縛られないこと。
スポンサーのために、常に視聴率を気にしなくても良いという点を思い出してほしい。
ただし、視聴率を気にすることは必ずしも悪いことではないと思う。
より良い番組を作るために、番組の発信者として受け手(視聴者など)がどんな反応を示しているかを確認する手段として活用するのは結構なことだと思う。
だが、決してそれに振り回されることがあってはならない。
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嘗て、NHKは民放の番組の中で、「時代にそぐわない」とか、内容が生真面目すぎて面白みがないと言う意味の「硬すぎる」と揶揄された時代があった。
大晦日の「紅白歌合戦」などは真っ先にそのターゲットになった番組だと思うが、
皮肉なことに現在は、あれほどあった民放の歌番組はほとんどが姿を消し、「紅白歌合戦」だけが生き残っている。
信念を貫き通した結果の栄冠として誇るべきことだと思う。
このことだけを考えても、NHKは自信を持っていいはず。
されど、今のNHKを見ていると、只々民放のマネごとをして、民放に「追いつけ追い越せ」を目指しているかのようだ。
件の「紅白歌合戦」でさえ内容的に民放化してきたように思える。
まさしく、原点を見失っているとしか思えない。
NHKにしかできない独自性ある番組を
更に、誤解を避ける意味で申し上げておくと、先述の「お笑い芸人」や「バラエティー番組」についてだが、わたしは彼らを悪いと言っている訳ではない。
民放で大活躍しているお笑い芸人をNHKは敢えて使う必要はないと言っているだけだ。
視聴率のとれる見込みのある芸能人やタレントを採用するのは至って簡単なことで、それではNHK独自の趣向や工夫、そして何より努力が感じられないではないか。
わたしのような部外者から見ると、努力を怠った「安易」とか「怠慢」としか感じられない。
放送業界を代表する立場にあるNHKはその先頭に立って、他民放のお手本になるべく独自性を発揮すべきである。
NHKはもとより、テレビ業界全体を見渡しても、どの局も似たり寄ったりの番組が繰り返し放送されている昨今、視聴者が期待しているのは個性的な番組の出現だと思う。
その点からもNHKはスポンサー、視聴率を気にせず番組制作ができるのだから、思う存分その独自性を発揮しコンテンツの中に反映させていただきたいと思う。
RheoによるPixabayからの画像 |
更に付け加えれば、政治家が選挙で掲げるマニフェストではないが、マイノリティに目を向けるのは選挙の時だけと言うことがないように、持続性ある活動を期待したい。
具体的には、高視聴率を望めないような番組でも打ち切るのではなく、必要とする人がいる限りポリシーある番組を躊躇わずに制作し続けてほしい。
例えば、BS日テレの「小さな村物語 イタリア」などは、いつも楽しみに視聴させてもらっているが、この種の番組はNHKに相応しいと常々思っていたのだが・・・
いまの日本が忘れてしまったものを思い出させてくれる、そして「人生とは?」の問いにヒントをくれる良い番組である。
ぜひ参考にされたい。
マイノリティーに優しい活動方針であってほしい
最後に、今回の値下げの方針に付随して「親元を離れて一人暮らしをする学生は原則受信料を払わなくてよい」といった若者向けの方針が掲げられているようだが、このことについても一言触れておきたい。
これはこれで結構なことだと思うが、先述したように最近のNHKの番組傾向から判断すると、若者ウケする出演者、番組内容など、いわゆる「若者志向」が優先され過ぎていないか。
確かにこれからのご時世、中心になってもらう若者を大切にすることは当然のことだが、一方で地方(地方とは限らないが)に住む一人暮らしのお年寄りや、インターネットなどパソコンやスマホの操作が苦手な人たちのための情報伝達手段としてテレビの役割はまだまだ大きいはずだ。
その意味で、こうした人たち向けの番組構成にも配慮をいただきたい。
Coffee BeanによるPixabayからの画像 |
銀行のATMやスーパー、コンビニのレジなど、あらゆる場所でセルフが主流になりつつある現在のIT社会にあって、いわゆるデジタル難民と呼ばれる人たちは生き辛さを感じているはずだ。
IT社会においては、情報量やもの選びに対する選択肢でも、できる人できない人との格差は拡がるばかり。
そんな中、スイッチ一つで画面が映るテレビはできる人できない人を問わず、皆の強い味方であり便利さは従来通り変わっていません。
テレビの画面を通じて、そうした少数者、弱者に対し配慮できるのはNHKしかないことを忘れずに!
それにしても、年末の番組「ゆく年くる年」のような心落ち着く番組は決してなくさないでいただきたい。紅白は見ていないけれど「ゆく年くる年」だけは欠かさず拝見しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
JDA 2023.02.19
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