あの頃、僕のシネマ パラディーゾ:「007 ロシアより愛をこめて」
12月4日、007シリーズとしては24作目になる「スペクター SPECTRE」が公開されました。
ボンド役にはシリーズ4作目出演のダニエル・クレイグ。これまでの3作の評判もよく、注目度の高い当たり役です。
さて、007シリーズと言えば映画化された第1作目の「ドクター・ノオ」(1962年公開)から半世紀以上の歳月が経った現在も尚、シリーズとしての魅力は決して衰えていません。新作ともなれば映画界最大の話題となり、マスコミはほって置きません。「スター・ウォーズ」シリーズと並んで、時代の流れを超越した、「化け物」的存在であることは確かなようです。
ところで、そちらの新作「スペクター SPECTRE」の方は劇場でじっくりと鑑賞していただくこととして、ここでの話題は時代を大きく遡り、007の映画としては第2弾になる007「ロシアより愛をこめて」です。
正直なところ、わたしはこの映画を劇場では観ていません。007シリーズを初めて劇場で観たのは第4弾の「サンダーボール作戦」から。その頃中学生だったわたしにとっては「サンダーボール作戦」は色々な意味で刺激が強すぎる映画でしたが、このシリーズが並みの映画でないことは感じ取っていたように思います。
当時、映画を観てわたしたちが持ったジェームズ・ボンドという主人公のヒーロー像は、型破りで唐突でした。そして、何よりも新鮮だったのです。(スパイという設定も当時は珍しい)
それは、乗っているクルマやスーツ、酒など、彼が愛用する品々への拘りとすべてに超一流を求める貪欲さに現れていたように感じます。
そう!忘れてはいけません、超一流を求めたのは女性に対してもでした。
そう、女性と言えば007シリーズで必ず話題になるのがボンド・ガールでありました。
当時の有名女優は意図的に(?)使わず、その時代時代の話題の女性を、たとえば「ミス○○」だとか旬の新人女優さんをボンド・ガールに抜擢するのが恒例になっていました。
わたしが今回「ロシアより愛をこめて」を採り上げたのも、作品としての面白さ、素晴らしさという点でシリーズ中で最も気に入ってたからですが、その他にこの「ボンド・ガール」にも関係しているのです。
「ロシアより愛をこめて」の中でボンド・ガールを演じたのが、ミス・ローマにもなったダニエラ・ビアンキ(Daniela Bianch)という女優さんです。歴代ボンド・ガールの中でも人気、評価の高い彼女ですが、わたしの一押しも実はダニエラ・ビアンキなのです。その魅力はわたしの稚拙な文章では到底伝えきれないと思いますので、映画「ロシアより愛をこめて」を是非ご覧いただきたい。
詳しい経緯は分からないですが、彼女の女優人生は短く10年足らずだったらしいので、「ロシアより愛をこめて」は彼女が最も輝いていたときの作品だったのかもしれません。
この映画のラストシーン、事件が解決しヴェニスの水上都市をバックに二人がボートで去ってゆく、あの場面はマット・モンローが歌う名曲「ロシアより愛をこめて」のエンディングテーマとともにわたしの脳裏を離れません。(もちろんラブシーンを伴ってのラストシーンでした)
それにしても、先日「伝説の女優 原節子さんを偲んで」を書いているときも思ったことですが、魅力溢れる女優さんはどうして引退が早いのでしょうか。引退が早いから惜しまれるのかどうかは判りませんが、チョッと残念です。でも、華やかな映画の世界に何の未練も残さず決別する、その潔さには脱帽です。そんな女優人生を選んだ勇気にも惹かれます。
蛇足ですが、「パリのめぐり逢い」のキャンディス・バーゲンもこのケースとは微妙に違いますが、出演作品を選び、決して女優一筋にならなかった知的な生き方にも好感を持っています。
さて、お話を007に戻しまして、
イアン・フレミングの原作を残念ながら読んでいないので、本の中でジェームズ・ボンドの人物イメージ、セッティングが全く解らないのですが、わたしたちの抱くイメージはどうしてもスクリーンの中のジェームズ・ボンド、つまり俳優「ショーン・コネリー」のキャラクターと重ねてしまいます。
いま、勝手に「わたしたち」と書いてしまいましたが、もしかしたら「わたし」と訂正しなければいけないのかも知れませんが、60年代をリアルタイムに生きてきた世代にとっては当たらずとも遠からずではないかと思うのですが...
冷徹さとユーモアと多面性を持つこの主人公ジェームズ・ボンドという役柄については、このシリーズが続く限り、常に俳優「ショーン・コネリー」と対比し議論され続ける永遠の課題なのかもしれません。
新作ではダニエル・クレイグが渋い演技で頑張っています。イメージ的には最も初代ショーン・コネリーに近いと囁かれています。これまでの彼の作品もすべて注目して観てきました。楽しませてもいただきました。
でも、その作品は一度観たら「もう一度」という気にならないのも事実です。
それに対し「ロシアより愛をこめて」はどうかと言うと、これまでに何度観たことでしょうか。
この事実がわたしは007シリーズに限りませんが、映画を語る上でとても重要なことに思うのです。言い古された言葉ですが、「何度観ても感動する映画」というのは、意識しても容易に創れるものではないと思います。そうした映画は世の中に数少ないのだと思います。
だからこそ、そうした映画創りを目指してもらえたらと思うのです。
最近の映画はCG技術の発展とともに、迫力あるシーンや信じられないような細密な光景を意図も簡単に創り出してしまいますが、そうした映像にわたしたちは瞬間的に驚き、確かに圧倒されるのですが、何故か心に残らないのです。もう一度観てみたいと思わないのです。
それは、慌ただしく時間に追われる現代という時代の所為なのかもしれませんが、できればゆったりとした気持ちで名画と呼ばれる作品を今一度鑑賞したいものです。
(cinema_002)
ボンド役にはシリーズ4作目出演のダニエル・クレイグ。これまでの3作の評判もよく、注目度の高い当たり役です。
さて、007シリーズと言えば映画化された第1作目の「ドクター・ノオ」(1962年公開)から半世紀以上の歳月が経った現在も尚、シリーズとしての魅力は決して衰えていません。新作ともなれば映画界最大の話題となり、マスコミはほって置きません。「スター・ウォーズ」シリーズと並んで、時代の流れを超越した、「化け物」的存在であることは確かなようです。
ところで、そちらの新作「スペクター SPECTRE」の方は劇場でじっくりと鑑賞していただくこととして、ここでの話題は時代を大きく遡り、007の映画としては第2弾になる007「ロシアより愛をこめて」です。
正直なところ、わたしはこの映画を劇場では観ていません。007シリーズを初めて劇場で観たのは第4弾の「サンダーボール作戦」から。その頃中学生だったわたしにとっては「サンダーボール作戦」は色々な意味で刺激が強すぎる映画でしたが、このシリーズが並みの映画でないことは感じ取っていたように思います。
当時、映画を観てわたしたちが持ったジェームズ・ボンドという主人公のヒーロー像は、型破りで唐突でした。そして、何よりも新鮮だったのです。(スパイという設定も当時は珍しい)
それは、乗っているクルマやスーツ、酒など、彼が愛用する品々への拘りとすべてに超一流を求める貪欲さに現れていたように感じます。
そう!忘れてはいけません、超一流を求めたのは女性に対してもでした。
そう、女性と言えば007シリーズで必ず話題になるのがボンド・ガールでありました。
当時の有名女優は意図的に(?)使わず、その時代時代の話題の女性を、たとえば「ミス○○」だとか旬の新人女優さんをボンド・ガールに抜擢するのが恒例になっていました。
わたしが今回「ロシアより愛をこめて」を採り上げたのも、作品としての面白さ、素晴らしさという点でシリーズ中で最も気に入ってたからですが、その他にこの「ボンド・ガール」にも関係しているのです。
ダニエラ・ビアンキ(Daniela Bianch) |
詳しい経緯は分からないですが、彼女の女優人生は短く10年足らずだったらしいので、「ロシアより愛をこめて」は彼女が最も輝いていたときの作品だったのかもしれません。
この映画のラストシーン、事件が解決しヴェニスの水上都市をバックに二人がボートで去ってゆく、あの場面はマット・モンローが歌う名曲「ロシアより愛をこめて」のエンディングテーマとともにわたしの脳裏を離れません。(もちろんラブシーンを伴ってのラストシーンでした)
それにしても、先日「伝説の女優 原節子さんを偲んで」を書いているときも思ったことですが、魅力溢れる女優さんはどうして引退が早いのでしょうか。引退が早いから惜しまれるのかどうかは判りませんが、チョッと残念です。でも、華やかな映画の世界に何の未練も残さず決別する、その潔さには脱帽です。そんな女優人生を選んだ勇気にも惹かれます。
蛇足ですが、「パリのめぐり逢い」のキャンディス・バーゲンもこのケースとは微妙に違いますが、出演作品を選び、決して女優一筋にならなかった知的な生き方にも好感を持っています。
さて、お話を007に戻しまして、
イアン・フレミングの原作を残念ながら読んでいないので、本の中でジェームズ・ボンドの人物イメージ、セッティングが全く解らないのですが、わたしたちの抱くイメージはどうしてもスクリーンの中のジェームズ・ボンド、つまり俳優「ショーン・コネリー」のキャラクターと重ねてしまいます。
いま、勝手に「わたしたち」と書いてしまいましたが、もしかしたら「わたし」と訂正しなければいけないのかも知れませんが、60年代をリアルタイムに生きてきた世代にとっては当たらずとも遠からずではないかと思うのですが...
冷徹さとユーモアと多面性を持つこの主人公ジェームズ・ボンドという役柄については、このシリーズが続く限り、常に俳優「ショーン・コネリー」と対比し議論され続ける永遠の課題なのかもしれません。
新作ではダニエル・クレイグが渋い演技で頑張っています。イメージ的には最も初代ショーン・コネリーに近いと囁かれています。これまでの彼の作品もすべて注目して観てきました。楽しませてもいただきました。
でも、その作品は一度観たら「もう一度」という気にならないのも事実です。
それに対し「ロシアより愛をこめて」はどうかと言うと、これまでに何度観たことでしょうか。
この事実がわたしは007シリーズに限りませんが、映画を語る上でとても重要なことに思うのです。言い古された言葉ですが、「何度観ても感動する映画」というのは、意識しても容易に創れるものではないと思います。そうした映画は世の中に数少ないのだと思います。
だからこそ、そうした映画創りを目指してもらえたらと思うのです。
最近の映画はCG技術の発展とともに、迫力あるシーンや信じられないような細密な光景を意図も簡単に創り出してしまいますが、そうした映像にわたしたちは瞬間的に驚き、確かに圧倒されるのですが、何故か心に残らないのです。もう一度観てみたいと思わないのです。
それは、慌ただしく時間に追われる現代という時代の所為なのかもしれませんが、できればゆったりとした気持ちで名画と呼ばれる作品を今一度鑑賞したいものです。
(cinema_002)
2015/12/22
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