How's everything? COFFEE BREAK: SCORPIONS 「Still Loving You」
SCORPIONS スコーピオンズ 「Still Loving You」
from ALBUM 「禁断の刺青 LOVE AT FIRST STING」
1984年 「禁断の刺青 LOVE AT FIRST STING」 |
Produced by
Dieter Dierks
Arranged and mixed by
Dieter Dierks and Scorpions
Klaus Meine - Vocals
Rudolf Schenker - Rhythm guitars, lead guitars
Matthias Jabs - Lead guitars, rhythm guitars
Francis Buchholz - Bass
Herman Rarebell - Drums
1984年の発売とあるから、小林克也氏のDJ番組「ベストヒットUSA」全盛時のベストテンを賑わせた一曲だ。自身も恐らくこの番組でこの曲を初めて知ったのだと思う。当時、ロック界はハードロック(HR)中心とはいえ今回のスコーピオンズなどのヘビーメタル(HM)系のグループをはじめとしてグラム、パンクといった、演奏以外の風貌やパフォーマンスで自己主張するようなグループが存在し、カテゴリー的には賑やかな時代だった。
チョッと背伸びをした革ジャンのツッパリお兄さんと年上らしきお姉さんとの絡みのジャケットは当時としてはかなり刺激的でジャケ買い的に思えるが、スコーピオンズというグループも収録曲の「Still Loving You」も既に知っていたということで厳密には「ジャケ買い」ではない。ただ、ジャケットが購入を決定づけたことは疑う余地はない。
このアルバムの発売以前からスコーピオンズはメロディ重視のバンドであったことはよく知られている。もともとHMグループ自体がメロディ重視のバラードを好む傾向はあり、その意味ではHMの熱烈なファンではない私のような部外者でも受け入れ易い要素は充分あったのだろう。
その中でも「Still Loving You」という楽曲は群を抜いて素晴らしいバラードだ。ボーカルのクラウス・マイネの伸びのある声は、以前はもっと艶やかだったというが、ヘビーメタルな楽器群の中にあってもその声量は引けを取ることはなく存在感がある。ジャーニーのスティーヴ・ペリーの声質とは厳密には異質なのだろうが、相通ずる部分も。
洋楽の特にロック系のリードボーカルの中には、レッド・ツェッペリンのロバート・プラントをはじめとして、こうした声量豊かで歌唱力のある男性ボーカルが目立つ。果たして彼らは発声法や歌唱法など本格的な基礎訓練と努力をもってあそこまで駆け上がったのか、それとももって生まれた天性(声) によるものなのかは興味深いところだが、いずれにしても驚異的である。
かつて、反抗精神と革新性をメッセージとして世に出た多くのロック系グループも、時空という「ろ過機」によって、その刺々しさは薄れ、持前の強烈な個性や過激さはいつの間にか日常的なものの中に溶けいってしまったかのようだ。それは「聞き慣れる」という一種の我々の一般的な行為によって引き起こされる現象なのだろうが、恐らく我々聴き手の側が彼らにようやく追いついたということを意味しているのだろう。
特に時の流れはある意味残酷で、ある一定の時代を一括りに束ねてしまう傾向がある。その境目がハッキリしていないにもかかわらず60年代や70年代として区切ってしまうのだ。
当時、ピンクフロイド、グランドファンク・レイル・ロード、CCRなどイギリス、アメリカのロック界は群雄割拠の時代で、それぞれのバンドが明確なアンデンティティーを主張していたが、それも今となっては一時代のバンドとして片付けられてしまう。当時、個性を二分していたビートルズとローリング・ストーンズでさえ、改めて今聴いてみるとサウンド的に共通性をもっていることに気付くのは私だけか。
思うに、今回採り上げたスコーピオンズ の「Still Loving You」のようなメロディアスで優れた楽曲はそれまでHMというジャンルに背を向けていたファンをも振り向かせるだけのパワーを持っているのではないだろうか。そしてこの曲をキッカケにスコーピオンズというグループを知り、HMの魅力を知ったリスナーは多いはず。HRとHMとの垣根を意識することなく身近な存在として位置づけたこの楽曲「Still Loving You」の功績は大きいと思う。6分27秒という当時としては長めの曲で、アルバムの最後を飾るに相応しいスケールの大きいナンバーである。
最後に、この「Still Loving You」が入った 「禁断の刺青 LOVE AT FIRST STING」というアルバムは実は、SCORPIONSとしてはかなりのセールスを記録したアルバムである。このコーナーの「まえがき」で「アルバムとしてはそれほど脚光を浴びなかったもの」という条件を掲げていたが、この点で今回の選曲は明らかにルール違反であったことをお詫びしたい。
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