ミニカーの優等生「トミカ」、ただ一つ残念だったこととは・・・

PexelsによるPixabayからの画像


30代の頃だったか、一時期ミニカーの「トミカ」にハマったことがありました。もう数十年前のことですが、横浜や川崎周辺の街の個人のおもちゃ屋さんを巡り、古めのモデル(廃盤になったもの)があれば、即買いで集めていました。

今回は、そんなミニカーの優等生「トミカ」についてお話です。


何と言っても、トミカの魅力はコストパフォーマンスが良いことだと思います。
手頃というか低価格で、あれだけ実車に忠実なミニカーが買えるのですから。

当時は、本屋さん同様に、それなりに個人の玩具店が彼方此方にあって、掘り出し物、いわゆるレア物がそうした街中の小さな玩具店に、ひっそりと陳列されていたのです。(今は期待できないでしょう)

デパートの玩具売り場もトミカは勿論置いてありましたが、そこではダメなのです。なぜなら、デパートはそれなりに多くの客が訪れるので、珍しいレア物はほとんど残っていないからです。あるのは最近発売された新商品ばかりなのです。つまりトミカのお宝コレクションとしての価値は、その時点ではほとんど無いに等しい訳です。とは言っても、こうした類のトミカも時代が何年も経過すれば、やがてはそれ相応の価値は出るのでしょうが、当時はそんな悠長な事は言っていられなかったのです。

古いコインの場合と同じように、コレクションとして価値があるのは、その物自体の製造数が少ないこと、さらに流通する数が少なかったこと(つまり売れた枚数)が大いに関係します。当然ながら、どちらも少ないことが稀少価値がある訳で、その理屈はどんな物にも言えることだと思います。要は、トミカの場合は、廃盤のトミカを探すことが重要なのです。


ところで、そんなトミカですが、ボクは以前から一つの疑問をトミカの製造会社「タカラトミー」に対し持っていました。それは車種によってトミカのボディーサイズ(縮尺)がマチマチなことです。「どうせ精密な製品を作るなら、実車に則したスケールにも拘れば」というのが、私の考えでした。しかし、トミカの大きさについては、後に触れますが企業の譲れないポリシーがあり、そのことは現在も変わらない方針のようです。



マセラティ・メラクSS(1/62)実車は4,335mm
デザインは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の
デロリアンDMC-12を手掛けたジウジアーロ


コレクターからすると、少なくとも私は、ボディーサイズが実車の大きさに即して、どれも同じスケールで作られている方が、コレクションを並べた時、やはりリアル感があってサマになると思っていました。以前からそのことは気になっていたのですが、突き詰めて考えたり調べた事はこれまでありませんでした。ネットの時代になって、最近ではこうした調べごとは、とても簡単になり助かっています。「そう!AIに尋ねてみよう!」と言った具合です。


さて、トミカの発売が1970年ということは、以前から承知していましたが、当時どうしてスケールを全車統一にしなかったのかについては、分からないままでした。

調べてみると、「なるほど」と納得できる理由がいくつかありましたが、「それはどうかな?」と幾分理解できない理由もありました。

例えば、発売に際しては「子供にとって遊びやすいサイズ」という「タカラトミー」の製作陣のコンセプト、大前提があったようです。当時、主流だった海外製のミニカーは10cm程度だったのに対し、トミカは約7cmというサイズを基準に考えていたようです。この考え方は私も大いに賛成です。しかしながら、これでは私の理想とは相反する訳です。

ということは、私の理想とは真逆のどのトミカも7cm程度に納めよういう意図ですから、実車の大きさの割合は無視されたことになります、例えば1/64で統一すると、トミカの定型赤箱に収まらないクルマがいくつも出てしまう訳です。
つまり、当初から「タカラトミー」は「定型サイズの箱ありき」の発想だったのです。


(図1) 左から旧ミニ・クーパー(1/50)、ホンダS2000(1/57)、
マセラティ・メラクSS(1/62)とスケールがバラバラなので、
3車とも同じようなサイズに見えてしまう。



当時、夢中になって集めていたころは、この統一感のないスケールはリアル感に欠けていて、非常にコレクター(私の程度ではコレクターとは言えないでしょうが)としては不満でした。
価格の割に精密で作りが丁寧なところは、さすがメイドインジャパンと評価していましたが、このスケールの問題はどうしても納得がいきませんでした。この点は後々に理由が明らかになっても、素直に頷けなかったのですが、「あること」に気づき納得がいったのです。


その「あること」とは、それまでの自分自身が如何に身勝手で、思慮深くなかったかを痛感させられる内容でした。
原点に立ち返り考えれば、トミカはそもそも幼児、子供向けの玩具だったことです。
ですから、子供の安全を第一に考えるのは基本中の基本です。どのクルマも同じくらいの大きさで、前述した子供が遊びやすい大きさに設定されているのは、当然のことだったのです。
無知な大人が、「勝手なこと言っている」その物だったのです。
そのことに気付いた瞬間、自分の頭を「ブリキのたらい」で叩かれたような、いつまでも余韻の残る衝撃だったのです。


ところで、安全性ということで思い出したのが、トミカの初期の製品はバックミラー(フェンダーミラー*(注1)、サイドミラー等)が無かったことです。これも小さな突起があることで、子供が怪我をしないようにとの配慮の一環だったようです。実車感を出すには欠かせない部分だったのでしょうが、当時は安全性を優先した苦渋の選択だったのかも知れません。

しかしながら、こうした考え方は、時代とともに製造が中国やベトナムなど海外にシフトして行く中で、変わっていったようです。確かに最近の製品には、サイドミラーが小さくついているのを見かけます。方針転換の理由は定かではありません。

そんな訳でこの投稿を書きつつ、まさに「子供のオモチャに大人の理想(リアル感)」を求めた自分自身の愚かさを、反省しているところです。


旧ミニ・クーパー(1/50)実車は3,075mm
現行モデルよりも小型。


ホンダS2000(1/57)実車は4,135mm


ご承知の通り、我が国は宮大工さんに代表されるように、遥か昔から精密さを要求される分野は得意とされてきました。その精神は時計やカメラや電子部品などの高度な技術を必要とする業種で、確実に活かされている訳です。その意味で言えば、トミカのディテールもその血筋を受け継いでいるのだと私は思います。

トミカは低価格でありながら、クルマ全体を構成するディテールの精密度は、他のミニカーを圧倒していることは、誰が見ても明らかです。
投稿を書いている現時点(2026年10月)のトミカのメーカー希望小売価格は、各594円(税込)のようですが、一部トラック系の大きい車やプレミアム系のグレードの高いものは、990円(税込)〜となっているいます。この造りでこの価格ですから、コストパフォーマンスは抜群と考えます。

雑学的に言えば、1970年のトミカ発売当初の価格は180円でしたから、物価上昇を考えた場合、他の物価と比べると如何なものでしょか。比較で思いつくのは、喫茶店で飲むコーヒー一杯の値段ですが、私の記憶では70年代は180円前後だったと思います。それが今では平均すると600円前後ですから、他と比べてもほぼ妥当なところと考えます。と言うか一部量販店などでは、トミカはディスカウントされて売られていますから、その意味では寧ろ良心的と言えるでしょう。

発売当時のクルマのシャーシ部分などを見ると、詳しいことは分かりませんが、重量感ある金属(ダイキャスト)が使われていますが、現在のものはコスト削減や重さの観点から、耐久性のあるプラスティック(ABS樹脂)で作られているようです。ここでも幼児に対する配慮がはたらいているのです。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン(ジウジアーロ)
トミカプレミアム unlimitedシリーズ 希望小売価格は1,320円(税込)
製品は海外製でした。



メイドインジャパンが時代とともに外国製になり、製品の材質も低コスト化され徐々に変わってきている訳ですが、製品への「こだわり」やコンセプトについては、できる限り維持していただきたいところです。

今回は、私の愚かな疑問が発端となり、このような投稿に至った訳ですが、「トミカは本来子供のオモチャである」という、そもそもの基本を忘れていた訳で、まさしく「本末転倒」「灯台下暗し」の典型的事例だったのです。大いに反省ですネ。


ただ、実車の相対的スケールを忠実に再現した「大人版トミカ」なる物があっても良いのではと、未練がましく思う今日この頃です(笑)。
陳腐ですが下線部分の表現、あえて使わせていただきました。


最後までお読み頂きありがとうございました。
from JDA

*注1:フェンダーミラーとは、現在のようなドアのサイド部分についているバックミラーではなくて、前輪の上部分のボディーの両サイドについたミラーのことです。後ろを確認する際、サイドミラーよりも少ない目の動きで確認できる点がメリットです。今でもタクシーなどでは見かけます。


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