ラファエル前派展 垣間見た彼らの心意気
ラファエル前派(兄弟団)という風変わりな美術集団の存在を知ったのは、果たして何時ごろのことだったのだろうか。当初は安易にもルネサンスの巨匠のひとりラファエロをこよなく崇拝する一派ぐらいに思っていたが、その作品を見るやその考えは一変したことだけは今尚はっきりと憶えている。
憧れの六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリーにて、そんな「ラファエル前派展」が開催されることを知り、早速ネットにて前売り券購入。去る3月12日、期待に胸膨らませ会場を訪れた。
ギャラリーは森タワーの52階にあり、そこへは専用エレベーターで昇ることとなる。こんな前段のシチュエーションもなかなかオシャレで、上野にあるような美術館とはまったく異なった趣だったが、これはこれで個性的で好いと思った。これは立地条件からして、はじめから大量動員を見込んでいないギャラリーだなと感じた。私としてはそんなところも好印象で大歓迎だったのだが。
展示会場に入るとそこそこの来客はいたものの、作品鑑賞の妨げになるほどではなく落ち着いた雰囲気でホッとした。(前回の横浜美術館ではとても不愉快な思いをしたので)
さて、ラファエル前派といえばジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・
ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントの三人の若
手芸術家が中心となり、英国で結成された美術集団である。
時代は19世紀半ば、ラファエロを規範とした当時の保守的な画壇
に反旗を翻したのである。
そんな彼らの心意気に賛同するかのように、ラファエル前派を知
った当時の私は、瞬く間に彼らの作品に傾倒していったように思
う。なかでもロセッティの「プロセルピア」の妖艶な魅力には特別な
想い入れがあった。
今回、この「プロセルピア」とは数十年ぶりの再会だったが、その
魅力、存在感は私のなかでは今でも微動だにしていない。そのこ
とを確認できただけでも充分有意義だったが、テート美術館所蔵
のこの団体の作品72点を一挙に鑑賞できたのも更なる喜びであ
る。
作品は上記のようなカテゴリー別に展示されていたが、その作品
群を鑑賞しているとひとつの意外性に気が付く。
それは、英国アート界にもたらした彼らの一種の革命ともいえる改
革運動は短命(5~6年程度)だったにも拘らず、代表作品が多か
ったこと。
更に驚きだったのは、こうした時代の潮流が穏やかになった以降
も、優れた作品をそれぞれのアーチストが放出し続けたという現
実である。
例えば、ロセッティの「プロセルピア」は運動の終焉から20年ほど
経ってからの作品であり、またこの運動の第二世代の代表格であ
るエドワード・バーン・ジョーンズの「愛に導かれる巡礼」という作品
に至っては作者最晩年の1896-97年の制作である。
当時、華々しく立ち上がったラファエル前派(兄弟団)だったが、そ
の活動期間は終始批評家たちの酷評に晒され、その寿命は意外
なほど短命ではあったが、それ以後、結成当初の3人は独自路線
を目指し、また多くの賛同者も英国アート界で活躍して行くこととな
る。
ひとつの運動としては結実しなくても、絵に対する、美に対する彼
らの情熱は決して消え去ることはなかったという証明なのかも知
れない。本来なら歴史に埋もれてしまっても致し方ない彼らの活
動期間だが、その後の彼らの粘り強い活動がその危機を救った
のである。
そう考えると、彼らの短期間の運動が当時の美術界にもたらした影響力は結果的には大きかった
し、意味のあることだったと言えるのではないだろうか。
まさに「たかが5年、されど5年」である。
現在彼らの作品がこのように多くの人に愛されていることを思うと、尚のことその功績は称えられる
べきだと思う。
今回の「テート美術館の至宝 ラファエル前派展」はそんなことを印象付ける展示会だったように感
じた。
それにしても、実物の「オフェーリア」の色彩の鮮やかさ(艶やかさかも知れないが)は素晴らしかっ
た。
帰りに、ミュージアムショップにて
「公式図録(日本展カタログ)¥2,300」、オフィーリア額絵、クリアファイルを購入した。
印刷物の「オフェーリア」では本物の色感は当然ながら味わえなかったが・・・
<追伸>
ラファエル前派の画家たちを取り巻く女性たち。
それは画家たちの被写体となったモデルさんたちである。
彼女たちに共通するのは皆一様に美人であること。
そして、公式図録の人物相関図を見ると、画家たち、モデルたちが複雑に絡み合っているが、その中でもアニー(アニー・ミラー)、リジー(エリザベス・ジダル)、ジェイン(ジェイン・バーデン)、
ファニー(ファニー・コンフォース)といったモデル陣があまりにも似ていることに気が付く。
これは単なる偶然とは考え難い。
ハントもロセッティもミレイも女性の好みは共通していたのか。
そして、彼女たちはラファエル前派の影の功労者、あるいは、もしかしたら真の功労者なのかも知れない。
「ラファエル前派展」概要
テート美術館の至宝
ラファエル前派展
英国ヴィクトリア朝絵画の夢
2014年1月25日-4月6日
森アーツセンターギャラリー
主催:テート美術館、朝日新聞、森アーツセンター、テレビ朝日
憧れの六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリーにて、そんな「ラファエル前派展」が開催されることを知り、早速ネットにて前売り券購入。去る3月12日、期待に胸膨らませ会場を訪れた。
ギャラリーは森タワーの52階にあり、そこへは専用エレベーターで昇ることとなる。こんな前段のシチュエーションもなかなかオシャレで、上野にあるような美術館とはまったく異なった趣だったが、これはこれで個性的で好いと思った。これは立地条件からして、はじめから大量動員を見込んでいないギャラリーだなと感じた。私としてはそんなところも好印象で大歓迎だったのだが。
展示会場に入るとそこそこの来客はいたものの、作品鑑賞の妨げになるほどではなく落ち着いた雰囲気でホッとした。(前回の横浜美術館ではとても不愉快な思いをしたので)
さて、ラファエル前派といえばジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・
ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントの三人の若
手芸術家が中心となり、英国で結成された美術集団である。
時代は19世紀半ば、ラファエロを規範とした当時の保守的な画壇
に反旗を翻したのである。
そんな彼らの心意気に賛同するかのように、ラファエル前派を知
った当時の私は、瞬く間に彼らの作品に傾倒していったように思
う。なかでもロセッティの「プロセルピア」の妖艶な魅力には特別な
想い入れがあった。
今回、この「プロセルピア」とは数十年ぶりの再会だったが、その
魅力、存在感は私のなかでは今でも微動だにしていない。そのこ
とを確認できただけでも充分有意義だったが、テート美術館所蔵
のこの団体の作品72点を一挙に鑑賞できたのも更なる喜びであ
る。
- 歴史 History
- 宗教 Religion
- 風景 Landscape
- 近代世界 Modern Life
- 詩的な絵画 Poetic Painting
- 美 Beauty
- 象徴主義 Symbolism
作品は上記のようなカテゴリー別に展示されていたが、その作品
群を鑑賞しているとひとつの意外性に気が付く。
それは、英国アート界にもたらした彼らの一種の革命ともいえる改
革運動は短命(5~6年程度)だったにも拘らず、代表作品が多か
ったこと。
更に驚きだったのは、こうした時代の潮流が穏やかになった以降
も、優れた作品をそれぞれのアーチストが放出し続けたという現
実である。
例えば、ロセッティの「プロセルピア」は運動の終焉から20年ほど
経ってからの作品であり、またこの運動の第二世代の代表格であ
るエドワード・バーン・ジョーンズの「愛に導かれる巡礼」という作品
に至っては作者最晩年の1896-97年の制作である。
当時、華々しく立ち上がったラファエル前派(兄弟団)だったが、そ
の活動期間は終始批評家たちの酷評に晒され、その寿命は意外
なほど短命ではあったが、それ以後、結成当初の3人は独自路線
を目指し、また多くの賛同者も英国アート界で活躍して行くこととな
る。
ひとつの運動としては結実しなくても、絵に対する、美に対する彼
らの情熱は決して消え去ることはなかったという証明なのかも知
れない。本来なら歴史に埋もれてしまっても致し方ない彼らの活
動期間だが、その後の彼らの粘り強い活動がその危機を救った
のである。
そう考えると、彼らの短期間の運動が当時の美術界にもたらした影響力は結果的には大きかった
し、意味のあることだったと言えるのではないだろうか。
まさに「たかが5年、されど5年」である。
現在彼らの作品がこのように多くの人に愛されていることを思うと、尚のことその功績は称えられる
べきだと思う。
今回の「テート美術館の至宝 ラファエル前派展」はそんなことを印象付ける展示会だったように感
じた。
それにしても、実物の「オフェーリア」の色彩の鮮やかさ(艶やかさかも知れないが)は素晴らしかっ
た。
帰りに、ミュージアムショップにて
「公式図録(日本展カタログ)¥2,300」、オフィーリア額絵、クリアファイルを購入した。
印刷物の「オフェーリア」では本物の色感は当然ながら味わえなかったが・・・
<追伸>
ラファエル前派の画家たちを取り巻く女性たち。
それは画家たちの被写体となったモデルさんたちである。
彼女たちに共通するのは皆一様に美人であること。
そして、公式図録の人物相関図を見ると、画家たち、モデルたちが複雑に絡み合っているが、その中でもアニー(アニー・ミラー)、リジー(エリザベス・ジダル)、ジェイン(ジェイン・バーデン)、
ファニー(ファニー・コンフォース)といったモデル陣があまりにも似ていることに気が付く。
これは単なる偶然とは考え難い。
ハントもロセッティもミレイも女性の好みは共通していたのか。
そして、彼女たちはラファエル前派の影の功労者、あるいは、もしかしたら真の功労者なのかも知れない。
今回の情宣ビラ |
テート美術館の至宝
ラファエル前派展
英国ヴィクトリア朝絵画の夢
2014年1月25日-4月6日
森アーツセンターギャラリー
主催:テート美術館、朝日新聞、森アーツセンター、テレビ朝日
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