2011年5月29日日曜日

音楽聴きくらべ_002「Antonio's Song  アントニオの歌(邦題)」

課題曲

#002 Antonio's Song  アントニオの歌(邦題)
作曲:Michael Franks
作詞:Michael Franks
(演奏)
ピアノ:Joe Sample
ベース:Wilton Felder
ドラムス:John Guerin
ギター:Larry Carlton
サックス:David Sanborn
パーカッション:Ray Armando

マイケル・フランクスが1975年に発表したアルバム「スリーピング・ジプシー」
今回採り上げる「アントニオの歌」はこの中の一曲。
レコード時代に購入しているが、CDでは持っていない。
代わりにベスト盤を持っている。

1975年発表のアルバム
「スリーピング・ジプシー」
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icon 当時、AORの先駆者的存在だった彼は、この一曲でその地位を不動のものにしたと云っても、過言ではないだろう。

ボサノバとジャズの香り漂う、洗練された都会的サウンドは、
聴く者をゴージャスな気分にさせてくれる。
彼自身、ボサノバとの出会いがその後の彼の音楽的方向性を大きく変えたと述べているように、
この「アントニオの歌」はボサノバの影響そのものである。
事実、タイトルにあるアントニオはボサノバの巨匠「アントニオ・カルロス・ジョビン」のことであり、
この曲は彼に捧げられている。

この曲を初めて知ったのは、恐らくどこかの喫茶店の有線放送で流れていたのを聞いた時だと思う。その時は気にならなかったが、今思えば超豪華ミュージシャンの競演盤だ。


こちらはベスト盤CD
当然、収録されている。
その状況はおぼろ気な記憶だが、その時の印象は実に強烈だった。それは、これまで聴いてきた音楽とはまったく異質で、ワクワクするほど新鮮だったから。AORというジャンルにいながら、それでいて同系のアーチストとは一線を画する存在。
その意味では、ギルバート・オサリバンと共通したところがあると私は勝手に思っている。
(ギルバート・オサリバンもロックのジャンルに分類されながら、その存在は特異である。)

そんな個性派で都会派のマイケル・フランクスの曲にあって、この「アントニオの歌」は更に異質な存在に思える。
それは、この曲が当時、彼の最大のヒット曲で代表曲だったという単なるセールス的な問題で云っているのではない。
元来、彼は都会派を謳っていたが、この曲だけはそうした匂いが感じられないという点である。
私自身の勝手な解釈だが、曲全体から受ける印象は都会的というよりは、ハワイやタヒチなど南の島のトロピカルムードを連想してしまう。
確かに、ボサノバタッチでスロウテンポな曲調がそう感じさせるのかもしれないが・・・
そこに吹いているのは高層ビルが立ち並ぶ都会の無機質な風では決してない、感じるのはユッタリとしたリゾート地の爽やかな風である。

2006年のアルバム
「ランデヴー・イン・リオ」
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ITunes Storeで試聴できます
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最初の発表から凡そ30年後の2006年のアルバム「ランデヴー・イン・リオ」には、
日本盤ボーナス・トラックとしてリメイク版の「アントニオの歌」が入っている。
(因みに、このトラックはボーナス・トラックとしては贅沢過ぎるほどの出来栄えである。)
そして、新たな録音では、曲全体を支えるハイセンスなサウンドによって、臨場感溢れる都会の空間を感じることができる。
録音技術の進歩もその効果に大きく寄与したと言える。
また、オリジナルのときよりも一段と洗練されたアレンジが魅力的である。
そこからは、もはや土の匂いはほとんど感じられない。
オリジナルとはガラリと雰囲気を一変させ、この二つの作品はまるで別の曲に思えるほど進化していた。


30年の時を経て、ようやく都会派の都会派による「アントニオの歌」を聴くことができた思いだ。
自身によるリメイク盤はとかく失敗作が多い中、このケースは数少ない成功例の一つと言えよう。
私にとってはどちらも捨てがたい作品である。


2006年発表
アルバム「シエスタ」
一方、木住野佳子の「アントニオの歌」はどうだろうか。
彼女のアルバム「シエスタ」に入っているが、このアルバムは全編ボサノバという異色のジャズ・アルバムで、当該曲の他「コルコバード」や「マシュケナダ」といったボサノバの代表曲も入っている。

もともと木住野の演奏はジャズアレンジでも、原曲のメロディーラインを大切にする方で、そこが彼女の持ち味でもある。
この曲でもその辺の姿勢は変わらず、原曲にかなり忠実である。
しっかりした構成で美しいメロディーを持つこの「アントニオの歌」は、尚更、演奏家に変更(変奏)の余地を与えなかったのであろうか。。
いつも以上に伸び伸びとした彼女の演奏は、曲自体のパワーによって後押しされているかのようだ。

こうした優れた楽曲に巡り会えることは、演奏家にとってみれば極めて幸運なこと。
その出会いが、ひとつの大きなステップとなり、
更なる技量(才能)を引き出してくれるチャンスに繋がる可能性もある。
生意気な言い方かも知れないが、「曲が演奏家を育てる」ということが実際あるのかも知れない。

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元来、このシリーズ「音楽聴き比べ」はスタンダード・ナンバーの聴き比べが基本である。
よって、採り上げる曲も当然、名曲と呼ばれてきた超有名曲が基本だが、
そうした曲の寸評は、既にたくさんの音楽評論家の方々によって処理済と考えている。

今回、マイケル・フランクスの「アントニオの歌」を採り上げたが、
スタンダード・ナンバーの大御所的ナンバー(魅惑の宵、ジェラシー、モアー、シャレードなど)と比べると、まだまだマイナーかも知れない。
だが、前回のミッシェル・ルグランの「風のささやき」同様、スタンダード・ナンバーには今一歩の発展途上にある曲をこのシリーズでは積極的に採り上げていきたい。
私の中では、既に立派なスタンダード・ナンバーになっているのだから・・・

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